倒れた稲と咲き始めた彼岸花。あと3日もすると花はめくるめく深紅の帯をつくるだろう。倒れた稲田をふちどる深紅の帯を想像する。しかし、そうなるまえに稲は姿をけすかもしれない。やっぱりいまだ、とレンズを向けた。ファインダーが、稲田をみる私の目の位置にくるように脚をたてる。全体の情景はこうして撮った。

 続いて倒れた稲に注目してワンカット。倒れた稲ではなく、つぼみまじりの彼岸花にピントを合わせてもうひとつ、そして、倒れた稲も花も両方はっきり撮ろうと欲張ってさらにひとつ。

 これら三カットは、フレーミングがまったく同じだ。合焦箇所と絞りを調整するだけで、表現に違いがでる、手持ちでは、同じようなフレーミングで複数枚撮る事はできる。しかし、まったく同じフレーミングというわけにはゆかない。三脚なら、それは簡単。三脚はブレ防止だけが役目ではない。表現にはばと深みを与えることができる大変重宝な撮影道具なのだ。

 ところで、彼岸花は季節に忠実な花である。秋のお彼岸が近づくとひときわめだつ花を咲かせる。葉がでるまえに花が咲くのは珍しいと、輪出されたことがあったという。地下茎は有毒だが、葉の話をしよう。

 伊豆のみかんは酸味が強い。皮も厚手で保存が利く。11月中に収穫し、年が明けるまで出荷を待つ。越年の保存は私の知る頃は、「穴」だった。西向きの斜面に穴を掘る。底に、彼岸花の葉を敷き詰める。みかんの鮮度が保てるのだ。とくに皮の色艶、みずみずしさが保てる。

 コタツでみかんが昔話となった今も、彼岸花は田んぼの脇を彩りはじめた。大雨が降って穂がいやがうえにも重くなったところへ風が吹いたか、稲が倒れている。機械刈りといっても、農家のひとの苦労をおもうと、心がいたんだ。

ポイント


三脚はブレ防止だけが役目ではない。表現にはばと深みを与えることができる大変重宝な撮影道具なのだ。


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